アニメ制作企業の事業モデル!4銘柄の特徴と今後の方向性

ディー・エル・イー

アニメ制作業界は、国内外での市場拡大と技術革新の波に乗り、大きな変革期を迎えています。
特に、動画配信サービスの普及は視聴形態を多様化させ、グローバルなコンテンツ需要を一層高めています。

これに伴い、知的財産IPを多角的に活用するメディアミックス戦略の重要性が増しており、アニメ作品を起点にゲーム、グッズ、舞台など多様なエンターテイメントへと展開する動きが活発化しています。

このような環境下、各アニメ制作企業は独自の強みを活かし、IP創出と育成、グローバル展開、そして新たな技術への対応を通じて、変化の激しい市場での成長を目指しています。
今回は、アニメ制作関連企業を取り上げ、それぞれの事業モデルと今後の方向性について解説します。

伝統技術とCG・AIの融合で次世代アニメを開拓「東映アニメーション株式会社」

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東映アニメーション株式会社は1956年の創業以来、日本アニメ界のパイオニアとして数々のヒット作を創出してきました。
映像製作・販売、版権許諾、商品販売を主要事業とし、「ワンピース」等の世界的人気を誇るIPを多数保有。
これらを核としたビジネス展開により、IPのエバーグリーン化を目指しています。

アニメ市場は海外を中心に成長し、VR/ARやAI等の新技術が革新をもたらしています。この環境下、同社はIPを軸にグローバル展開を強化。
既存IPの価値最大化や新規IP創出に加え、「地産地消型」や「ハリウッド型」といった戦略的地域展開により、世界中のファンへ作品を届けています。

加えて、製作能力の革新にも注力。伝統的な手描き技術と最新CG・AI技術を融合させています。
国内外のスタジオとも連携し製作体制を進化させ、多様化する視聴者の期待に応える高品質な映像と感動的なストーリーを追求。
これにより、製作能力の革新を通じて魅力的でインパクトのある作品を創作し、市場での存在感を示しています。

同社は、保有する強力なIPと事業基盤を背景に、技術的リーダーシップと市場シェアの拡大を追求する方針です。
海外市場の開拓や新技術を活用したIP体験の提供は、事業展開における重要な要素と考えられます。
一方で、競争環境の激化や市場の嗜好変化、外部環境のリスクも事業運営上の課題として認識されています。

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高品質アニメ制作とIP多角展開で世界に挑む「株式会社IGポート」

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株式会社IGポートは、複数のアニメ制作スタジオや出版社を傘下に擁する企業グループです。
映像制作事業は連結子会社が担い、「攻殻機動隊 SAC_2045」を手掛けたProduction I.Gや、THE ONE PIECE」を制作中のWIT STUDIOなどが名を連ねています。

出版事業を担う連結子会社のマッグガーデンは、コミック誌、コミックス、電子書籍の出版・販売を手掛けています。
また、同社グループは製作委員会への出資やコンテンツ資産を活用し、国内外への二次利用に関する権利販売を行う版権事業も展開。
これら事業を一体的に運営することで、IPの価値最大化を推進しています。

IGポートグループは、3DCG技術を積極的に活用した映像制作に取り組み、企画から編集まで一貫した制作ラインを構築することで品質水準の維持に努めています。
しかしながら、制作期間の長期化やコスト増により、受注損失引当金を計上するケースも見られ、より一層のコスト管理が求められています。

IGポートグループは、人的資本やIPに関する事項を経営上の重要課題と捉え、これらのリスク管理に取り組んでいます。
次世代クリエイターの発掘・育成や、優秀な人材及び協力会社の獲得にも継続的に注力し、事業基盤の強化を図っています。

IPを核に“メディアミックス戦略”を展開「株式会社マーベラス」

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株式会社マーベラスは1997年設立の総合エンターテイメント企業です。
同社はIPを核に、ゲーム、アニメ、音楽、舞台など複数のメディアへ同時多角的に展開する「メディアミックス戦略」を強力に推進し、IP価値の最大化を追求しています。

音楽映像事業が主にアニメ制作を担い、「東京喰種」等のアニメや、人気IPを原作とする2.5次元ミュージカル「テニスの王子様」等の舞台公演も展開。
これらはメディアミックス戦略の一環として、映像、ライブ、音楽という異なる体験を通じ、IPの魅力を多角的に訴求するものです。

デジタルコンテンツ事業では、これらのIPをコンシューマゲームやスマートフォン向けアプリとして開発し、メディアミックスの重要な出口を担います。
アミューズメント事業においても、「ポケモンメザスタ」等の人気キャラクターを起用したキッズ向けアーケードゲームを展開。
グループ全体でIPを基軸とした「マルチコンテンツ・マルチユース・マルチデバイス」戦略に基づき、多角的な事業を進めています。

マーベラスは、魅力的な新規IPの創出と効果的なメディアミックス展開を事業戦略の柱としています。
同社にとって、強力なIPの創出と育成は継続的な課題であり、これには関連投資や開発費が伴います。
また、過去には資産評価損を計上した事例もあり、資産評価に関するリスク管理も事業運営上の考慮事項の一つです。

SNSで独自路線を切り拓く"ファスト・エンタメ"企業「株式会社ディー・エル・イー」

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株式会社ディー・エル・イーは、「ファスト・エンタテインメント」を事業の核とする企業です。
IPの企画・開発からキャラクターライセンス供与、SNSを駆使したマーケティング支援、Flashアニメーションを源流とするコンテンツ制作までを一気通貫で手掛けています。
代表作「秘密結社鷹の爪」などのIPは広告や商品化に活用されています。

同社のコンテンツ制作は、トレンドや時事性を取り入れた短尺でSNSで話題化しやすい点が特徴です。
SNSでのバイラル効果を重視し、視聴者との直接的なエンゲージメントでIP認知度向上とファン層拡大を図る戦略です。
近年はアニメ制作工程へのAI技術導入を進め、制作効率化と新たな表現を目指しています。

同社は今後の事業展開において、保有IPの価値最大化、AI等先端技術を活用した制作力強化、新規事業の収益化を重要な方針として掲げています。
また、主要株主である朝日放送グループホールディングスとの連携を通じ、IPの露出機会拡大を図るとしています。

しかし、同社は数期にわたり営業損失と営業キャッシュ・フロー赤字が継続しており、これは継続企業の前提に関する重要事象等として開示されています。この状況を早期に解消すべく、高収益事業であるソーシャル・キャラクター・マーケティング・サービスの強化、コスト構造の最適化、選択と集中、資金調達 といった対応策を講じています。

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